出雲科学館へ
「異才、発見!」が出版されてすぐ、出雲に行く機会がありました。
ちょうど異才発掘プロジェクトの説明会があり、出雲科学館にも立ち寄りました。
説明会は平日にもかかわらず、島根県外から参加されている方がたくさんいらっしゃいました。遠くは東京や茨城から。
中邑先生や高橋先生のお話を熱心に聞きながら
子どもたちのことを真剣に思う親、先生方のパワーを強く感じました。
出雲は緑が濃く、とてものんびりとした雰囲気で、気持ちの良い町。広々とした道を進んでいくと、今井書店という大きな本屋さんがありました。
そこに拙書が並んでいるのをみた時、東京の書店に並んでいるのとは違う感慨がありました。
出雲から小さなプロペラ機に数段のタラップを上り乗りこみ、大阪、京都での打合せの後、新幹線で東京へ。
慌ただしい出張でしたが、心豊かな時を過ごすことができました。
伊勢海老と格闘
異才発掘プロジェクトの「甲殻類を食す」というプログラムがありました。
教室の子どもたちは直接手で触ることができずに悪戦苦闘。
「いまどきの子は、手袋やトングがないとダメなのかぁ」とその様子を眺めていました。
私が子どもの頃は、ザリガニをとったり、カエルの卵をバケツに入れておたまじゃくしになるのを楽しみにしていたりしてたのになぁ。
あれっ?おたまじゃくしを見ていた記憶はあるけれどカエルに変化する様子は記憶がない……。どうしたっけ?
さて、先日、ふるさと納税で届いた伊勢海老。
発泡スチロールのふたを開けるとおが屑の中に埋まっているエビがウニョウニョと動いているではありませんか。
思わず、ぎゃーっ、と言いながらふたを閉め、ゴム手袋をつけ、トングを手にし、わなわなしながら再度ふたを開ける……が、ビョンと立派なヒゲが飛び出すと、またふたを閉めてしまいました。
何度か繰り返し、これは無理だと友人の料理人にヘルプを求めるという情けない結果になりました。
ごめんなさい、人の振り見てなんやかや言える立場じゃなかったわ。
異才発掘プロジェクトとの出会い
東京大学先端科学技術センターの中邑研究室では生きづらい人たちが、人間本来の生きる力をサポートし、いきいきと生きられる社会をつくるための研究や活動が繰り広げられています。
凹デザイン、Do-it JAPAN、ATACなど様々なプログラムを取材させていただきました。
そして、中邑先生が
「公教育の枠から飛び出し、特化した才能を持っているけれど、学校に行くのが困難な子どもたちのその才能をどんどん伸ばすことができたらおもしろいと思いませんか?」
とおっしゃった時、私はとてもわくわくしました。
準備の段階からその現場をみることができたのは幸いでした。
けれども、それは、頭で考えるよりもずっと大変なことで、一人ひとりの個性をしっかり受け止めることは相当な覚悟が必要です。
なにごとも真剣に突き詰めて考える。
簡単に答えが出るものではありません。
中邑研究室の取り組みは、ただ一人の子どもを救うということではなく、ユニークな才能が日本の社会で発揮でき、それを受け入れる社会をつくるというものです。
人が動けば社会も動く。
狭い視野にとらわれず、広い世界に目を向ければ、それぞれが活躍できる居場所もきっとあります。
このプロジェクトの取材を通じてあらためていきいきと生きることの素晴らしさに触れることができました。
『異才、発見!』(岩波新書)
東京大学先端科学技術センター中邑研究室と日本財団の取り組みである『異才発掘プロジェクト』に長期潜入取材させていただきました。
こうして形になって発信することができました。
生きづらい、居場所がないと感じている子どもたちが生き生きと輝けるようになるにはどうすればよいのか。
中邑賢龍先生をはじめ、スタッフのみなさんが子どもたちと真剣に向き合う様子は、ときには緊張感があり、とびきりの笑顔もあります。
教育の在り方を変えるというよりも、社会を変えるという取り組み。
多様な人々を受け入れる社会こそが、子どもたちの活躍できる領域を広げてくれる。
壮大なプロジェクトに触れ、わくわくしながらこれからも現場に携わっていきたいです。
ごあいさつ
こんにちは!
ライターの伊藤史織です。
with Triangle のブログが新しく再開します。 ウィズ トライアングルは、伊藤史織のライティングハウスであるとともに、誰もが触れたことのある体鳴楽器・トライアングルのように打てば響き、音律を持たない自由な振動が、波紋のように広がっていくものづくりに携わっていこうと仲間と共に創った工房です。
文字は、視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚を眼に見えるかたちにするための方法のひとつ。
文字のほかにも、あらゆるものの力を借りて、ものづくりをしていきたいと思います。
どうぞ、よろしくお願いします。
以前のブログ http://witht.exblog.jp